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第13話 三原と花屋

Author: 月歌
last update Huling Na-update: 2025-07-16 11:31:09

(速水 視点)

「あ、三原さん。店先で騒いでごめんね」

「いえ……大丈夫です」

僕と竜二のつまらない会話の間も、三原は黙って待っていてくれた。三原進は母親の三原沙月より辛抱強いタイプのようだ。それでも、僕が声を掛けると、三原はすっと視線を逸らされてしまう。

ーーまあ、僕の自殺未遂が原因で『かさぶらんか』の経営が傾いたわけだから、三原に嫌われていても仕方ないか。

それにしても……何もない店だな。

「ねえ、三原さん。『かさぶらんか』って花屋だよね。花が全く見当たらないのだけど……なんで?」

「はぁ?そんなの……金がないからに決まってるだろ。次の買主が花屋を経営するとも思えないからって、借金取りが花を全部回収していったよ」

「え、そうなの?……僕は花屋を経営するつもりなんだけど」

「え?」

「僕は花屋『かさぶらんか』を経営するんだよ」

店の傾きかけた看板を指さすと、三原もつられるように視線を向けた。色褪せた赤い板には、かすれた文字で『かさぶらんか』と記されている。

ーー金具ごと抜け落ちそうなほど傾いていて、見上げているだけで不安になるような代物だった。

「文字はかすれているけど、レトロでいい看板だね。綺麗にしてあげたら、いい感じなると思わない?」

「『かさぶらんか』の名前で、花屋を経営するつもりなのか、速水。……あ~、速水さん」

「速水でいいよ。年齢あんまり変わんないでしょ?僕も三原って呼んでいいかな?」

三原とは長く付き合うつもりだから、呼び捨てのほうがしっくりくる。

彼は黙って従うことにしたようで、静かに頷いた。

その様子を見ながら、僕はさらに問いかける。

「ねえ、地下の風俗店の入り口はどこにあるの? 花屋の奥?」

「ああ、花屋の奥に店と繋がる扉はあるけど、こっち側からしか開かない仕組みになってる。風俗店の入り口は、このビルの反対側にあるよ。……って、速水も一瞬だけ勤めてたじゃないか、その……」

三原が言葉を濁したので、僕が代わりに続きを引き取った。

「……性奴隷としてね。でも、あの時はパニックになっていたから、風俗店の入り口とか全く覚えてないんだ。それに君のお父さんに囲われてからは、屋敷から出ることもなかったから」

「……深窓の令嬢」

三原の言葉に僕は思わず顔を顰める。性奴隷を深窓の令嬢とは……皮肉にもほどがある。僕は思わず三原を睨みつけていた。

「深窓の令嬢が、
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